「もっと主体的に動いてほしいんです」
管理職研修やコーチングの場で、本当によく聞く言葉です。
部下の成長を願っているからこその悩みですが、お話を伺っていると、実は多くの方が同じところでつまずいているように感じます。
それは、「育成には順番がある」ということです。
いきなり『主体性』を求めない
部下に対して、
「もっと自分で考えてほしい」
「指示待ちではなく動いてほしい」
「自分の意見を言ってほしい」
そう思う上司の方は多いですね。
私自身も、多くの経営者や管理職の方から同じ相談を受けます。ただ、よくよくお話を聞いてみると、「なぜそう考えたの?」と部下の考えを聞く前に、
「それは違うよ」
「こうした方がいいよ」
と結論を伝えてしまっているケースが少なくありません。
もちろん、間違いを正すことは必要です。ただ、それだけでは部下は育ちません。
なぜなら、上司は結論しか見ておらず、部下がどんな考えでそこにたどり着いたのかが見えていないからです。
部下の本音が見えるようになった管理職の変化
以前、ある管理職の方に、
「まずは『なぜそう考えたの?』と聞いてみてください」とお伝えしたことがあります。
すると後日、こんな感想をいただきました。
「部下が自分の意見を言うようになったんです」
「今まで見えていなかった考え方が分かるようになりました」
さらに、
「正しいことを伝えればいいと思っていました。でも、それだけでは育成にはならないんですね」
ともおっしゃっていました。
私はこの言葉に、とても共感しました。
上司が正しい答えを持っていることと、部下が成長することは、実は別の話なのです。
自己決定理論から見える「育成の順番」
研修で、ときどき自己決定理論のお話をします。
自己決定理論では、人が意欲的に行動するために必要な要素として、
・関係性
・有能感
・自律性
の3つが挙げられています。
この感覚を持てば、人は、モチベーションが上がるというものです。
私はこの理論に触れるたびに、管理職の方々との対話やコーチングの現場を思い出します。
理論上、この3つに順番があるわけではありません。ただ、現場で多くの方を見ていると、
関係性が築かれ、その中で有能感が育ち、結果として自律性につながっていく
という流れがあるように感じています。
つまり、人材育成の「順番」を間違わなければ、勝手にやる気が出てきて、「自主性」が生まれると思うのです。
部下の成長を急ぐ前に
「主体性」は上司が与えるものでも、指示で引き出すものでもありません。
まず部下との関係性を築き、次に少し背伸びをする挑戦を支えながら有能感を育み、その結果として自律性が生まれてくる場面を数多く見てきました。
だからこそ、「部下が育たない」「主体性がない」と感じたときは、本人のやる気や能力だけに原因を求めるのではなく、
部下の話を十分に聞けているか
安心して意見を言える関係ができているか
成長を実感できる機会をつくれているか
を振り返ってみることも大切ではないでしょうか。
人財育成とは、正しい答えを教えることではなく、成長したくなる環境を整えること。
部下を変えようとする前に、まずは上司の関わり方を少し変えてみる。
そこに、育成のヒントが隠れていると思います。