クレームの電話を取った時、皆様は、どんな気分ですか?
たいていは、「あー、取ってしまった」「面倒くさいな」と、ネガティブな気持ちになりませんか?
クレームの小さな火種が、大火事に発展することもあるので、会社にとっては何としてもうまく対応したいところです。しかし、昔からクレーム応対の研修があるように、悩ましい課題の一つとして今も君臨しています。
今回は、皆様の会社でも起きているかもしれないクレームからの機会損失のお話です。
何でそんなに怒るんですか??
最近、クレームの応対研修をしていると、ある違和感に気付きます。
ロールプレイをすると、特に若い方から共通した反応が帰ってくるのです。
「なぜそんなに怒るのか分からない」
「そもそも自分なら思っても言わない」
「強く言えないし、別の方法を考える」
こうした声は、決して珍しくありません。むしろ今の若手にとっては自然な感覚です。対立を避け、できるだけ穏やかに解決しようとする。その姿勢自体は合理的ですし、否定されるものではありません。(もちろん若手以外にも、温厚な方はたくさんいらっしゃいます。)
しかし、ここに一つの落とし穴があります。
「自分がしないことは、相手もしないだろう」という前提です。
だから、相手の痛みや熱量を想像することができないのです。
クレームは“特別な人”のものではない
顧客は同じ価値観では動きません。先ほどの若手と違って、怒り狂って電話をしてきますし、思ったままを直球で言ってきますし、別の方法を考える余裕なんてないわけです。
小さな不満が積み重なり、「期待を裏切られた」と感じたとき、人は怒りとしてそれを表出します。
つまりクレームは、感情のプロセスを経た結果であり、特別な人の行動ではありません。
ところが、「自分は言わないので、顧客も言わないだろう」という前提でいると、いざクレームが来た途端、急なボディブローを食らって対応がめちゃくちゃになってしまうのです。
顧客がなぜ怒っているのかを十分に想像できないまま応対するため、論点がずれたり、感情が伴わない説明をしてしまったりと、結果的に対応がちぐはぐになりやすいのです。
そしてもう一つ深刻なのは、そのズレに気づけないことです。顧客は必ずしも強く指摘してくれるとは限りません。「この会社は分かってくれない」と判断した時点で、関係を修復する機会は失われます。
つまり、問題はクレームが激化することではなく、諦めて静かに見切られることにあります。
ここに、「次はない」という大きな「機会損失」が生まれます。
機会を失くす前に磨くべきもの
クレームは、会社にとって「宝の山」です。クレームからファンになってもらう一発逆転ホームランの方法は、山ほどあるんです。また、これまでの仕組みを見なおすきっかけになったりもします。クレームには、顧客の期待や不満、改善のヒントが凝縮されているからです。
ところが、静かに去って行かれると、本来なら改善できたはずの問題に気づけない。クレームが来ないことで課題が表に出てこない。そして、あっという間に顧客が離れていく。
もう、言い訳すらできないのです。
多くの企業は「クレーム対応力」を高めようとしますが、それはあくまで“起きた後”の対処です。企業が本当に警戒すべきは「怒り」ではなく、何も言われないまま終わる関係=沈黙です。ここに気づけるかどうかが、これからの組織の差を生みます。
だからこそ必要なのは、世代を超えた顧客心理の理解と、現場での言語化トレーニングです。
自分の前提を一度横に置き、クレームに丁寧に耳を傾け、顧客の感情に寄り添う。そうした「共感力」を組織として磨いていくことが、クレームを“宝”に変える最短ルートだと感じています。