文章力に自信がなくて…というご相談を、ここのところ、よくお受けします。
ビジネスの現場で、メールやチャット、報告書など、「書く」という仕事は意外に多いですよね。
正しい敬語の使い方に不安がある、簡潔にしようと思うあまり無機質な文になる。
でも、正しければ、いいのでしょうか?短ければいいのでしょうか?
実は、私は大学院で、「職場における配慮表現」を研究していました。日本語には、敬語だけでなく相手の気持ちに配慮する言葉や言い方がたくさんあります。(例えば、「~してもらう」という言いかたや、クッション言葉などもそうです。)
話す時には、とても丁寧な印象の方も、メールになると、急に冷たく感じることはありませんか?
「書く」言葉も、立派な対話です。大切な会社のコミュニケーションとして「伝える」という意識が必要だと思います。
敬語の呪縛?!
新入社員研修で敬語を扱うと、途端に皆さん、遠い目になります(笑)。
敬語を完全にマスターするのは、平均40歳という論文もあるほどですから、敬語は誰にとっても難しく、やっかいな位置にある日本語です。
また、ビジネス文では、「失礼のないように」「感情を入れすぎないように」と、正しい敬語を使えば使うほど、文面が無機質になりがちです。
敬語はそもそも、相手を尊敬している気持ちだけでなく、相手と距離があることを示す役割があります。「なれなれしい関係ではない」ことを伝えることで、相手を敬うわけです。
でも実は、その“距離”が、かえって「冷たい・・・」と誤解を生む原因になることもありますね。
そこで、敬語+αで、こちらのやさしい気持ちを伝える方法をご紹介しましょう。
「書く」コミュニケーションのコツ
敬語だけでは、どうにもうまく伝わらないという方へ。
相手への気配りを、文字で見える化する方法があります。今回は、すぐに使える3つのコツをご紹介します。
①「結論+思いやり」
正しい敬語だけだと、冷たく見えるときに効果的です。最後にひと言「相手に向けた思いやりや感謝」を加えると、印象が和らぎます。
例)ご依頼の件、承知しました。
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ご依頼の件、承知しました。お忙しい中ご連絡いただき、ありがとうございました。
②断定を避ける「ぼかし表現」
きっぱり言い切らない、ぼかした言い方は、押し付け感をやわらげ、相手が受け入れやすくなります。メール等の文章でも、特に相手のミスを指摘するときや変更を促すときは、このような言い方がおすすめです。
例)~です。
⇓
「〜かと思います」「〜のように感じます」
③「~てください」ではなく依頼表現を
「〜してください」は一見丁寧なようでいて、相手に対する“指示感”や“圧”が出やすい表現です。もはや、命令形だと覚えておきましょう。(もちろん、緊急時や対等な関係であれば問題ありません。)
例)ご確認ください。
ご対応ください。
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「〜いただけますでしょうか」
「~いただけますと幸いです。」
自分らしい言葉を選ぶ
言葉の正しさは、「信頼」に直結します。きちんとした日本語からは、安心感や知的な誠実さが感じられるからです。そういう意味でも、正しい日本語(敬語)が話せることは、もちろん大切なことです。
しかし、「正しさ」にばかり目を止めると、失敗を恐れて定型文を並べたビジネス文になりがちです。
みなさんは、文章から温度を感じたことがありませんか?
それは、文章にも「人柄」が表れるからです。
本来持っている気遣いや優しい気持ちを表すために、ぜひ、今回ご紹介したような、文章がやわらかくなる「思いやりの一言」を入れてみるのがおすすめです。
すると、無機質な文章が、温度感のあるやさしい文章へと大変身します。
正しく、やさしい文章は、結果的に受け取りやすい文章になるはずです。